パチンコや競馬、宝くじなど
基本的には胴元が儲かる仕組みとなっています。
「次こそはくるかもしれない」
「自分だけは当たるかもしれない」
「多くのひとは負けてしまう仕組み」というのは理解しているが、それでも「自分だけは!」といったように考える方も多いと思います。
しかし、その自信の根拠は、一体どこからくるものか、考えたことはありますか?
今回は、ひとの認知を歪ませてしまう
「ポジティブイリュージョンの存在」をご紹介します。
目次
ポジティブイリュージョンとは
◇ポジティブイリュージョン
実在の事物を、肯定的にゆがめて解釈し、想像する精神的活動のこと。
同じような意味合いで「平均以上効果」とも言われたりしますが、
要は人間だれしも「自分は平均よりも優れている」という思い込みを抱き、無意識的に過大評価してしまう現象のことです。
アメリカの高校生を対象にした調査で、
「リーダーシップがあるかどうか」質問をすると、
およそ70%が「自分は平均以上」と答え、
大学教授を対象とした調査では、94%が「自分は同僚より優秀だ」と回答します。
平均以上と答えるひとは、多くとも半数に限られるはずだが、9割以上ものひとが「自分は平均以上」とみなしているのは、いかに自己認知が実際以上に肯定的な方向に歪んでいるかを示しているといえるでしょう。
ポジティブシンキングとの違い
似た言葉に「ポジティブシンキング」があります。
「ポジティブシンキング」は、簡単に言えば「前向きな考え方・積極的な物事のとらえ方」のことを指しています。
「ポジティブイリュージョン」と「ポジティブシンキング」は、どちらも同じく肯定的で前向きな物事の捉え方を指し示しています。
しかし、異なる点としては「意識的か、無意識的か」があげられるでしょう。
ポジティブシンキングとは、意味の通り「考えること」で、「ポジティブ(前向き)」に「シンキング(考える)」ことです。つまり能動的に訓練することで習得可能な考え方といえます。
一方ポジティブイリュージョンは、現実に対する偏った見方や錯覚による影響が強いため、
受動的で無意識的といえるでしょう。
意識的、無意識的、どちらにしても、前向きな姿勢自体は良いことだといえます。
しかし、無意識的な見方が強い場合、現実に大きな歪みを発生させることがあるため、注意が必要となります。
ポジティブイリュージョンが生む、デメリット
僕が経営していた居酒屋は、メインのお客様が35歳~50歳くらいのサラリーマンの方々でした。
どのお客様も、居酒屋で話している内容は似通っているものもあり、
どちらかというと御自分の不遇を嘆いたり、ストレスや不平不満をぶちまけているような発言をされる方も多かった印象です。
この不平不満などは、なぜ生じてしまうのか。
その一因となっているのが、ポジティブイリュージョンの影響であるともいえます。
主観的な評価と客観的な評価の乖離
「ポジティブイリュージョン」の影響で、自分自身の「主観的な評価」は高くなっています。
しかし、人事評価や現実は厳しく、たとえ正当に評価されていたとしても、
自分自身が思っている評価と、客観的な評価には、少なからず乖離が発生してしまうことが多いでしょう。
したがって、多くのひとが「正当に評価されていない」という不満を抱いてしまうのである。
ここで明らかになるのが、前述した「ポジティブシンキング」の能力。
もしこの時に「ポジティブ」に「シンキング」することができれば、「まだまだ伸び代がある」「課題がみつかった」などと、それこそ前向きに捉えられるからである。
しかし、「ポジティブシンキング」を能動的に訓練していなければ、「無意識なポジティブ」が大きな足枷となってしまい、
正当に評価していない
誰も理解してくれない
などと、不満やストレスの要因になってしまう。
ポジティブイリュージョンとの向き合い方・まとめ
昨今はSNSなどの普及も相まって、些細な出来事でもすぐに炎上してしまう、「攻撃的な世の中」になっているように感じます。
そしてこの背景にも「ポジティブイリュージョン」の影響が存在している気がしてなりません。
誰しも、「自分が正当に評価されていない」と感じてしまうと不満を覚えるだろう。
先の例のように、居酒屋でぶちまけることもできず、留飲を下げる場所や対象が変化してしまうことで、「攻撃的な世の中」になっているように感じている。
「ポジティブイリュージョン」は、「厳しい現実」から自身を守る「防衛本能」のひとつなのかもしれない。しかし、無意識だからこそ厄介でもある。
だから、自分が評価しているのは、あくまで「主体的な幻想」という認識をもつことが、「ポジティブイリュージョン」と向き合う為の、はじめの一歩なのかもしれない。
「前向きな姿勢」が「現実の不満」を生む一因になってしまうのは、少し皮肉にも感じてしまいますが、うまく付き合っていきたいものですね。おしまい。