【ゲリラ雷雨も補足可能にした】ウェザーニューズのユニークな【素人の気象予想サービス】

気象情報サービスを手掛けるウェザーニューズをご存知だろうか?元々海運業者をはじめとする法人や自治体向けの気象情報サービスやシステム構築で成長した会社である。

しかし2000年代から経営の踊り場を迎えた同社は、現在では個人向け事業として躍進されている。

今回は、ウェザーニューズの転換点、その経緯がとてもおもしろく、勉強になったのでご紹介していきます。

ウェザーニューズとは

ウェザーニューズは1986年設立の民間気象情報会社で、30余年にわたる発展の中で世界50か国でサービスを行う世界最大級の総合気象情報会社に成長しました。日本国内においては、約2,500社と取引を行う業界最大手です。24時間365日交代で、500人以上の気象のプロが世界の気象状況を監視しています。また、250人以上の専任のIT技術者が、最先端のテクノロジーを駆使して予報精度の向上を目指した開発を行っています。蓄積している世界の気象データも民間最大級です。

前述したように、はじめは法人向けサービスの同社であったが、需要が一巡した2005年には、4200億円の営業赤字に陥ってしまう。当時法人向けに大きな伸びしろを見出せなくなってしまったため、新たな種まきを始めた。

それが個人向け気象情報サービスである。

ウェザーニューズのサポーター(有料会員)制度

2008年夏、同社は、これまで「予測不可能」とされていた「ゲリラ雷雨」の補足に成功した。

それには、「サポーター」という気象予報士でも専門家でもない、一般素人の影響があった。

ウェザーニューズのユニークなサービスに、「サポーター」という「一般人参加型気象予報サービス」がある。

これは同社の有料会員になれば、気象予報の報告ができるといった、非常におもしろいものだ。

なぜなら、「無料会員で届く情報」では満足できないひとが有料会員になるのに、その有料会員に「無償で情報を打ち込んでもらう」というものだからである。

「そんなことうまくいくはずがない」と主張する人も多く、

とりわけ一番猛烈に反対をしたのは、社内のプロの「気象予報士」であった。

彼らは予報の難しさや責任の重さを痛いほど理解している。素人が束になっても、予報には専門知識が必要で、簡単にできるものではないと考えていたからだ。

観測+感測

そもそも往来の気象予報とは、「アメダス」に代表される観測機で、集めた天気情報をコンピュータで解析し、晴れや雨といった予測を導き出すものである。

そこに同社は、「サポーター」というひとの感覚や目線を取り入れたのだ。

はじめは、サポーターに協力してもらい「雨カップ」と呼ぶビーカーを自宅において、毎晩雨水がどれだけたまったかを報告してもらう簡単なものであった。

また携帯電話に雨量を打ち込む際に、「ザーザー」や「シトシト」などから感覚的に選んでもらう。

これだけでも、膨大な数で寄せられた情報を集計して、地図に色分けすると「アメダス」による観測と大差なく、さらには入り組んだ地形についてはより細かく雨の分布を知ることができたといわれている。

気象予報士が素人に敗北した日

「結局、雪は降らなかったな。」

そう言って、ウェザーニューズの気象予報士たちは夜空を見上げた。

降っているのは予報をだした「雪」ではなく、冷たい雨だった。2009年、この日は予報のプロ集団である同社が、素人であるサポーターに負けた「敗北記念日」となった。

この日、日本の上空には強い寒気が流れ込んでいた。

往来の気象予報モデルによれば「雪がふる黄金パターン」に合致していた。

気象予報士は自信を持って「雨が雪に変わる」「ドライバーはチェーンを準備しましょう」と声高に伝えた。

しかし、同社に送られてくるサポーターの予報は「90%以上が雨」だった。

サポーターは雨空を見ながら、五感を駆使して地元の天気を感知していたのだ。

そして、「観測」は「感測」に負けたのである。

膨大な量は、ノイズを包んでくれる

当時、雨カップの発案者の一人でもある取締役が、「素人に雨量を量ってもらって、何がわかるんだ?」と批判の声にさらされたことを明かしている。

事実、おかしな数値を入力してくるひとも、一定数存在していたからである。

しかし、それでも継続していくと、一部の誤ったであろう入力も、そのほかの正確な情報が覆い隠してくれることがわかったからだ。

膨大な情報を基に地図上を俯瞰するのに、多少の誤った情報は問題にはならなかった。

一部のノイズは、「圧倒的な量」のもとでは、表面化しないことが明らかとなったのである。

ゲリラ雷雨の補足

2008年からは「ゲリラ雷雨メール」の有料配信も行っている。有料会員の中から「ゲリラ雷雨防衛隊員」を1万人募り、レーダーが雨雲を捉えてからでは手遅れとなる局地的な積乱雲や雷を自分の感覚で確認して報告してもらったところ、

都内で発生したゲリラ雷雨の内76.7%を事前に補足成功したのである。

さらに、2年目の2009年には、防衛隊員は2万5千人に増加し、都内の補足率も90.6%まで高まった。

つまり、レーダーなど、観測機では「不可能」といわれていた「ゲリラ雷雨の観測」が可能になったのである。

ウェザーニューズのユニークな取り組み

今回紹介した他にも

●10分毎の天気予報

●ウェザーリポーター(素人報告組織)

●分単位で知れせてくれる「雨雲カウントダウン」

●長期予報(例えば4月現在で調べると今年の梅雨(6月)の特徴や見解など)

といったように、ユニークな取り組みが多数あります。

ひとえに天気予報といっても、

ライブ感を大切にしていたり、とても親しみのある取り組みが多いと思います。

有料会員にならなければアプリのダウンロード自体は無料なので、よかったらみなさんも使ってみてください(*^^*)

まとめ

「往来の観測」ばかりに頼らず、一般市民という「観測の素人」も取り込んだ試み、とてもユニークで勉強になる事例だと思います。

当時のリーダー格である予報士が、「心中(選択)するならサポーター」という言葉を残し、今でも語り草となっているそうです。

「観測」と「感測」の融合。浪漫と算盤(ソロバン)ではないですが、相反する二つの掛け合わせは最強なのかもしれませんね。

きっと、結果を叩きだし、周囲から納得されるまでは、批判や非難がごうごうにあったと思いますが、それまであきらめずに変革を貫いた姿勢に脱帽です。

企業の歴史系もおもしろいなー。またいろいろ調べてみて、勉強になりそうなものがあれば記事にしていきます( *´艸`)おしまい。

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