【失敗の原因は成功体験にある⁉】成功体験のダークサイドと認知の歪み【成功体験は9割捨てる】書評・解説

こんにちは☺ちょっぷです☺

本格的な夏になってきましたね。

九州では、20時近くまで暗くならないので、時間間隔が少し狂ってしまいそうになります。

マスクも大切だと思いますが、くれぐれも熱射病には気を付けていきましょう☺

さて、本日も元気よく本のご紹介をしていきたいと思います。

▽本日ご紹介する本はこちら▽

【成功体験は9割捨てる】

著:志水 浩氏

 

「光が差せば影ができる。その光が強ければ強いほど、影の存在も濃くなってしまう」

本書は、「成功体験」という”光”を通じて、生まれてしまう”影”という名の「ダークサイド」にスポットを当てながら、成功を続ける為に理解しておかなければいけないことを、多くの実例をあげながら伝えられている内容となっています。

本書の切り口は、以前ご紹介した書籍「世界倒産図鑑」の”過去の亡霊型”に近しい内容でしたが、テーマを絞られている分、実例や考察などがより多く詰まっており、内容も充実していたように思います。

(”世界倒産図鑑”の記事はこちらから)

本記事は、ビジネス書のご紹介記事となります。

☆良い本を探している

☆おすすめのビジネス書を知りたい

☆ビジネスで成功を積み重ねていきたい

☆成功体験に関心がある

このような方々が主な対象になると思いますので、該当する方々にわかりやすく伝えられるよう意識して書いていきますので、参考になればなによりです☺

本作の内容と流れ

本作の主な内容と流れは次の通りです。

第一章 成功の逆襲 ~成功がもたらす弊害~

成功体験の四つのダークサイド

過去の成功にとらわれる「固執の罠」

組織のみならず個人でも陥る「固執の罠」

過去の成功体験から逃れられない「束縛の罠」

成功を失敗に導く「驕りの罠」

次の成功を阻む「思考停止の罠」

「思考停止の罠」に陥る別パターン

第二章 なぜ成功体験のダークサイドが生じるのか

ダークサイドを生む五つの要因

心にかけている色めがね

練磨の文化の落とし穴

社員が役割を見失ってしまう

成功の真因が見えていない

忖度と保身が停滞を招く

第三章 ダークサイドを乗り越える”鍵”

「観察」が常識を打ち破る

「社内常識」という制約を外す

小さな疑問を大切にする

組織に”ゆらぎ”を与える

「情愛」によって他人を動かす

ステークホルダーとの対話

第四章 ダークサイドの向こうにある未来を創る

前提を疑い、真の目的を問い続ける

批判的思考を習慣化する

個性をマネジメントする

エゴグラムを使って運営する

リーダーは率先して失敗しよう

適度なストレス状態をつくる

時間間隔を変え、異質を投入する

妄想のメカニズムを理解する

妄想の9割を解消する

第一章 成功の逆襲

第一章では、「成功体験による弊害」ともいえる、成功体験を通して生まれる「負の側面」に関して、考察していく内容となっています。

そして、成功体験を通じて生じる”ダークサイド”は、大きくは次の四つに集約できるといいます。

✔固執の罠

 

✔束縛の罠

 

✔驕りの罠

 

✔思考停止

四つの罠

過去の成功にとらわれる固執の罠 ~まだいけるんじゃない?症候群~

組織や自身を取り巻く状況が刻々と変化しているにもかかわらず、過去の成功体験に固執して、”変えていくべきこと”を変えずにそのまま継続してしまう罠。水を張った鍋にカエルを入れて、徐々に温度を上げていくと、カエルは温度変化に気付かず茹で上がって死んでしまいます。いわゆる、”ゆでガエル現象”。

固執の罠は、固執対象である成功体験が強ければ強いほど、強烈に作用します。

過去の成功要因から逃れられない束縛の罠 ~離れられない症候群~

成長の原動力になった商品・顧客・流通網などの経営リソース、理念・哲学・企業文化といった価値観などが、逆に足かせとなって変化を拒むケース

成功を失敗に導く驕りの罠 ~すごいんだから症候群~

アップル創業者のスティーブ・ジョブズは「成功を収めた時、用心しなくてはならないのは傲慢という名の客だ」という言葉を残しています。

その他にも、驕りを戒めることわざや格言はたくさん存在します。

・驕る平家は久しからず

・実るほど頭を垂れる稲穂かな

・勝って兜の緒を締めよ

これらは「驕り」というものが、それだけ強く無意識的に生じてしまうものだということの表れなのでしょう。

事実、ブランドや商品に対する過信が判断を誤らせてしまったり、成果をだしていた優秀な人材が会社の足かせになってしまったりするケースもあります。

次の成功を阻む思考停止の罠 ~当たり前でしょ症候群~

大きな成功を収めた後、環境変化が進み、成功の要素が陳腐化しているにもかかわらず続けてしまう。成功をリードしてきた人たちに考えることを依存して、人も組織も成長できない。

特に、組織の規模が大きかったり、トップダウン方式によるワンマン経営の会社に、よくみられる現象でしょう。

これら四つのダークサイドは、そもそもなぜ生じてしまうのか。その原因を考察していくのが、第二章となっています。

第二章 なぜ成功体験のダークサイドが生じるのか

第二章では、ダークサイドが生まれる要因を以下の五つの観点から考察しています。

①認知心理学

 

②日本人が培ってきた文化・風土

 

③役割認識

 

④成功要因分析

 

⑤人間の行動原理

第二章では、総じて「人間は錯覚する生き物である」ということを確認して頂く形の内容となっています。”認知バイアス”などに代表される”心の色メガネ”は有名な話ですよね。

人は、「見たものを信じる」のではなく、実際には「信じていることが見える」

個人的には上記の一節が印象に残りました。これは、良い方向にも、良くない方向にも作用してしまう、認知の歪みだと思います。この傾向が成功体験と結びつくことにより、ダークサイドを生じさせてしまうのでしょう。

第三章 ダークサイドを乗り越える”鍵”

本章では、四つの企業の実例を交えながら、ダークサイドに陥った企業の復活劇から、乗り越えるためには何が必要なのか、また、そもそもダークサイドに陥らない為に、日々心掛けていかなければいけないことはなにかを確認する章となっています。

なぜダークサイドに陥ってしまっているのか、共通している「答え」は、現場にあると説かれています。

業界の常識や、ほんの少しの違和感にも疑問を持ち、一部の情報だけではなく、様々な情報に触れてみる。

書いてある内容はいずれも、当然大切とされているような考え方や行動であったりしますが、愚直にきちんと行動できているケースは意外と少ないのかもしれませんね。

この章で特に印象に残ったのは、「改革を起こすのは”よそ者”で”若者”で”バカ者”が行う」と伝えられている点です。

長年同じ仕事に従事していると、既存のやり方に慣れてしまい、現状維持バイアスが形成され、日々の業務に疑問も抱かず、日々消化しようとしてしまうひとも多い一方で、

業界や既存の社員とは違う視点から、事業や会社を客観的にみて動く”よそ者”で”社内の常識にはまらないバカ者”が、結果的に改革を起こすことが多いということなのでしょう。

このような点から、”他部門からの抜擢”や”若手人材の登用”、”異業種からの人材採用”など、新鮮な視点で考え、動ける人材を計画的に登用して、組織に程よい”ゆらぎ”を与え続けることも大切だと説かれています。

第四章 ダークサイドの向こうにある未来を創る

本章では、成功体験のダークサイドを乗り越えて、リーダーシップを発揮していくため、意識的に注力すべきことを確認していく章となっています。

初めに、「そもそもの前提」を疑ってみることから始めてみるのが良いでしょう。

まずは、次の文章を読んでみてください。

山田さんは、建設業に従事して25年、監督者として15年以上のキャリアを積むベテランです。現在手掛けているのは12階建てのマンションで、工期は残り5か月。梅雨時期の長雨と相次ぐ台風の影響で予定は大幅に遅れていました。

 

本来であれば、工期優先で協力会社から人を寄越してもらい人海戦術で後れを取り戻すのですが、昨今の人手不足で手当てがつきません。現場で働いている職人たちに、残業・休日出勤をしてもらって作業を進めている状態でした。

 

少ない人数で無理を強いており、疲労蓄積を心配していたときに、事故が起きます。

5階で鉄骨の塗装作業をしていた職人が、誤って足場から足を踏み外し、落下してしまったのです。

 

落下した職人は、同じ現場で働いていた山田さんの長男でした。

 

落下を聞いた山田さんは、慌てて現場に向かいます。人だかりをかき分けて近寄ると、長男は額から血を流して横たわっていました。意識もないようで、声をかけても反応がありません。ふと気付くと、向かいに長男の手を握り締める男性がいます。

 

そして、こう、つぶやきました。

 

「俺の息子が、死んでしまう」

この文章を読んでみると、一見おかしなことが起こっていると感じるでしょう。しかし、この文章に間違いはありません。

もしこの文章が、「おかしなこと」になっているのであれば、それは「前提」に問題があります。

なぜなら、山田さんは、女性だからです。

そして、向かいの男性が夫であり、落下したのは二人の子です。

始めにこの文章を読んで、「おかしなこと」になっていると感じてしまった方は多いと思いますが、それは”建設現場の監督”は”男性”だろうと、「前提を固定化」させてしまっている為に、生じてしまう現象です。

この固定観念は、無意識の中で行われ、自分の考えや判断、見え方ややり方が狭まってしまうことの要因となりえます。

この「厄介な無意識の前提」は、避けることはできないのか。それには、ある習慣が有効だと説かれています。

クリティカル・シンキング(批判的思考)

無意識の前提を避ける為には、「クリティカル・シンキング」の習慣を持つことが有効とされています。

「クリティカル・シンキング」とは、「批判的思考」と訳され、悪しき前提や固定観念、バイアスを外して物事の本質を正しくとらえて考える方法です。

簡単に説明すると、”考えを疑い続けること”であり、このクリティカル・シンキングを習慣化するポイントは次の3つとなります。

①目的志向

⇒問題解決に当たる際に、目的は何かを明確にすること。

 

②そもそも誤った前提で物事を考えているという自覚を持つ

⇒固定観念やバイアスは避けられないが、バイアスがかかっているという自覚と意識を持つことで、③に繋げることができる。

 

③目的、前提を問い続ける習慣を持つ

⇒①や②に対して、本当にこれでいいのか?間違ってはいないだろうか?と、問い続けることで、行動が修正されていく。

意図的にストレッチ・ゾーンを作る

「クリティカル・シンキング」の他にも、ビジネスパーソンが成長をし続ける為に、意識すべきポイントは存在します。

その一つが、「ストレッチ・ゾーン」に身を置くことです。

ストレスのない環境よりも、適度なストレス環境のほうが、パフォーマンスが向上するという「ヤーキーズ・ドットソンの法則」と呼ばれるものがあります。

この流れを汲み、生みだされたものに「三つの心理領域」という考え方です。

三つの心理領域

▽三つの心理領域▽

図の中心に位置するのがコンフォート・ゾーンと呼ばれる快適領域。

慣れ親しんだ業務や課題をこなす、見知った人間関係のなかで過ごすなど、安心感があり居心地がよい環境を指します。

その外側に位置するのがストレッチ・ゾーンと呼ばれる挑戦領域。

難易度の高い業務や新しいチャレンジが促され、心理的に負担がかかる状態。しかし、無謀な挑戦という訳ではなく、頑張れば手の届くレベルで、スキルやマインドも向上することから、「ラーニング・ゾーン」ともいわれます。

一番外側に位置するのが、パニック・ゾーンと呼ばれる混乱領域。

非常に強いストレスが生まれる厳しい局面で目標達成や問題解決を進める状況を指し、ハイリスク・ハイリターン型で大きな成長と成果が期待できます。度合によりますが、エリート教育においては何度か経験させる領域といわれています。

人間の脳は、快を求め、不快を避けるようにプログラミングされているので、意識しなければ、中心で快適環境のコンフォート・ゾーンに向かいます。

しかし、それでは組織も個人も、成長は停滞してしまう為、組織全体に対しても、個人的にも、意図的にストレッチ・ゾーンを用意することが求められます。

「昨日したことを今日も行い、今日行ったことを明日も行う」といった行動を繰り返していくと、徐々に思考停止状態に陥ります。この思考停止状態を避ける為にも、意識的にストレッチ・ゾーンに身を置くことを心がけることが必要となるのです。

意図的に異質(よそ者)を投入する

第三章でもお伝えしましたが、意図的によそ者を投入することも、効果が見込めるでしょう。

成功体験を経験した組織は、「○○は××である」といった社内常識・組織常識に無意識レベルで縛られていきます。同じ場所で、同じ経験を長年積んでいくと、組織に所属する全員が同じ固定観念を抱きやすくなることは、もはや仕方のないことだとも思います。

しかし、外部からきた異質な人間は、社内常識も組織常識も持たなければ、固定観念もまるで違ったものを持っています。

その異質な人事は、組織に”ゆらぎ”を与え、常識を疑うきっかけを生じさせることが見込めます。

行動心理学の有名なお話で「カマスの実験」というものがあります。

カマスと、その餌の小魚を、真ん中に透明の間仕切り板をはめた水槽にいれます。

 

間仕切りの左右に、カマスと小魚を分けて入れる。

カマスは小魚を食べようとしますが、透明の間仕切り板にぶつかり、食べられません。その状態が何度も続くと、ついにはカマスは小魚を食べるのを諦めます。

 

その後しばらくして、透明の間仕切り板を取ります。

 

しかし、小魚がカマスの前を通り過ぎても、カマスは小魚を食べようとはしなくなります。

これは、「学習性無力感」と呼ばれる現象で、努力しても成果が出ない、回避しようと抵抗してもできないというような状態が続くと、無力感を感じてしまい、努力や回避をしない状況に陥ることを指しています。

一般的にはここまでのお話ですが、実はこの実験には続きが存在します。

諦めているカマスの水槽に、別のカマスを入れます。すると新人のカマスは小魚をあっというまに食べてしまいます。それを見たベテランカマスは、驚きの事態が生じます。

 

新人カマスの様子を見たベテランカマスは、半信半疑ながらも小魚に近寄り、思い切って小魚を食べてみる。

(美味い!なんだ、食べられるんだ!)

 

その後、ベテランカマスは以前のように小魚を食べるようになるのです。

「カマスの実験」では、固定観念を抱いていない別のカマスが、既存の固定観念にとらわれていたカマスに”ゆらぎ”を与えることで、ベテランカマスは小魚を食べることができるようになりました。

「カマスの実験」がそうであるように、意図的に”ゆらぎ”を生じさせるためにも、異質な人材を投入することは、好手の一手となり得るでしょう。

まとめ

今回ご紹介したお話は、ある種、当たり前だと感じるような内容も多く、(そんなのわかってるよ!)と思いたくなるようなお話もあったでしょう。

しかし、客観的には理解できることでも、いざ当事者となり、その瞬間、瞬間で適切な判断ができているかといえば、そのような方は実に少数派だということもまた事実です。

だからこそ僕たちは、ダークサイドや失敗談を繰り返し確認することで、改めて意識を見直し、自覚を深め、日々疑いを持つことを行っていかなければいけないと思います。

”自己効力感”や”自己肯定感”は、成功体験を経験することで強くなりますが、

「成功体験が後の失敗の主な要因だった」などと、皮肉な結果とならないよう、”自己効力感”や”自己肯定感”とは区別することが大切なのかもしれませんね。

今回ご紹介した本作は、読みやすく、また良い本であったので、気になった方はポチりしてみてください☺

本日も、みなさんにとっていい日になりますように☺おしまい☺

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