前回は、ビジネスを行ううえで、最も大切なことは市場選定であるというお話をしました。
そして今回は、市場選定後、その市場のお客様は「何を望んでいるのか?」、その本質部分を、
「マレーシアにある3種のタクシー」というお話でご紹介しようと思います。
目次
マレーシアには3種類のタクシーが存在する
①最新のアプリを搭載しているタクシー
②ショッピングモールの出入口で待機しているタクシー
③「秘密のスポット」に出向き乗客を獲得するタクシー
この3種類のタクシーは、
「お客様を獲得し、目的地まで届けることで売上を上げる」という目的は同じです。
では、それぞれの特徴を含めながら、詳しく解説していきます。
①最新のアプリを搭載しているタクシー
マレーシアにも最新で流行りの集客媒体を搭載しているタクシーが存在します。
有名なのが「タクシーアプリ」です。
この「タクシーアプリ」は、簡単に説明すると、このアプリを搭載したタクシーと乗客は、ネットを経由し連絡を取り合うことが可能となるアプリです。
例えば、乗客がタクシーに乗る際、「タクシーを呼ぶ」というボタンを押すことで、瞬時に近くを走るタクシーに連絡が入ります。
タクシー側のアプリがその連絡を受信すると、「タクシー・タクシー」と、ひとに代わって通知してくれます。
その他に予約機能も搭載され、時間外の受付も可能となったので、取りこぼしのロスが大幅に軽減できるようになりました。
このアプリは非常に優れもので、一見とても便利な集客ツールに感じますが、盲点も存在します。
それは、「本質は今までと変わっていない」ということです。
この集客アプリが行うことは、近くを通るタクシーに反応するので、
これまで人為的にタクシーを探していた行為を、アプリが変わりに行っているだけで、その行為自体にはほぼ変わりがありません。
また、予約に関しても、
受付ロスは減少したかもしれませんが、予約が必要であるひとは、営業中に再コールすればいいだけなので、予約数全体の母数が増加したという結果にはつながらない可能性もあります。
そのうえで、アプリの管理維持費も経費として毎月重くのしかかってくるでしょう。
結果として、「乗客数を増やし、売上を増加させる」という本来の目的は、
このアプリを搭載しているだけでは、達成できていないことが理解できると思います。
②ショッピングモールの出入口で待機しているタクシー
マレーシアにも当然、規模の大きなショッピングモールが存在します。
例えば、日本の「イオン」などがそうで、地域のお店と比べると、規模もスケールも群を抜いています。
そこには、連日のように多くのひとが行き来するので、タクシーも列をつくり、乗客がくるのを、今か今かと待っています。
しかし、その「今」がくることは、なかなかありません。
なぜなら、ショッピングモールを行きかう多くのひとは、タクシーの「見込み客」ではないからです。
「見込み客の定義」は後程解説しますが、ひとの多さ=見込み客の多さとはなりません。
いくらひとが多くても、
ショッピングモールに行きかう多くのひとは、
交通手段を求めているのではなく、ショッピングモールでの買い物を求めています。
この見込み客を誤ってしまうと、売上を上げる為のアプローチとして、正しいとは言い難い行動となってしまいます。
③「秘密のスポット」に出向き乗客を獲得するタクシー
ここまで見てみると、「タクシー業界という市場そのものが難しい」と感じてしまいそうですが、
どこの市場にも最適なアプローチを行い、しっかりと儲けているひとたちは存在します。
そして、この③のタクシーが向かう秘密の場所とは、「バス停」です。
定刻通りにやってくることが当たり前である日本だと、信じられないかもしれませんが、マレーシアを含め、多くの発展途上国は定刻通りにバスが来ることなど、ほとんどありません。
しかし、時刻表だけは存在します。
乗客は、来るか来ないかわからないバスをただ黙って待っているしかありません。これほどイライラする交通機関はないでしょう。
そして、当てにならないバスを待ち続けるひとが、一定数存在することも事実です。
そこに目を付けた勝ち組タクシーが、颯爽とバス停に現れます。すると、来ないバスにしびれを切らした乗客が次々とタクシーに乗り込んでいくのです。
バスの10倍以上もする運賃にも拘わらず、タクシーに乗ってしまうその理由は、
その乗客が「交通機関」を求めている見込み客であり、なおかつ「いつ出発するかわからない」という損失が、バスの10倍以上の運賃というマイナス要素を跳ね除けてしまうからです。
そして、目的地まで送り届けたタクシーは、また涼しい顔をしてバス停まで戻ってきます。
タクシーというのは、乗せている時間が長ければ長いほど売上が上がるシステムなので、これほど効率的なものはありません。
見込み客とは
タクシーで売上を上げるために
・最新の車種にする
・きれいな内装を保つ
・最新アプリを搭載する
これらもある程度大切な要素なのかもしれません。
しかし、売上を上げるためには、「何を望んでいるか」を明確にすることが最も大切です。
今回のケースでは、「一刻も早く目的地に辿り着くこと」以外は必要ありません。
他の要素は、売上には直結しない、あくまで「おまけ」程度のものであることが理解できます。
そして、何度もでてきたこの「見込み客」を定義すると、
①お金を払う心の準備ができているひと
②お金を払ってでもその問題を解決したいひと
という2種類となります。
したがって、この2種類の見込み客以外は、「冷やかし客」となります。
見込み客には段階がある
なぜ多くのひとが、見込み客を見分けることができないのか?
それには、見込み客の3つの段階が関係しています。
①悩んでいる
②解決策を探している
③すでに商品を購入したことがある
この段階は、③になるほど見込み客の判断が濃厚となります。
次章から順番に解説していきます。
①悩んでいる
40歳のひとが、肩こりや腰痛に悩んでいるとします。
40歳ともなってくると、「一切コリがない」というひとはいないと思いますが、
そんなコリという悩みを抱えたひとたちも、
例えば5000円のマッサージ店があったとして、
コリをほぐしに5000円を払いに行くのかというと、そんなことはありません。
悩んでいたとしても、必ずしもお金を払うとは限らないのです。
ここが多くの人がハマる罠です。
これは営業トークや、技術うんぬんの話ではありません。文化の違いだからです。
40歳まで、マッサージ店にお金を払わなかったひとで、そもそもマッサージ店を知らなかったなんていうひとは極々わずかのはずです。
つまり、マッサージ店に対して、お金を払わない選択を、40年間実行し続けているひとということでもあります。この40年間の壁はとても分厚いもので、周囲がセールスして破壊できるものではありません。
結果として、見込み客ではなく、冷やかし客となる可能性が高いということです。
②解決策を探している
①の悩みが、限界値を超えると、解決策を求めるようになります。
ひとに聞き、ネットで調べ、解決策を求め外出もするようになるでしょう。
しかし、ひとつだけ注意が必要なのは、その悩みをどこで解決するかはまだ決めていないということです。
よって、「見込み客、かもしれない」という判断が正しいことになります。
③すでに商品を購入したことがある
この段階にいるひとは、「確実な見込み客」といえます。
なぜなら、その市場に対して、お金を払った経験があるからです。
市場の売り手は、自社か他社なので、5000円のマッサージを受けたひとは、また同じようにコリがでてくると、同じ金額のマッサージ店に行く可能性はとても高いといえる。
そして、「このお店以外、絶対にどこのお店にもいかない」というひとは、ほとんど存在しないので、
「確実な見込み客」として判断ができます。
まとめ:結論
市場を選定したら、あとは基本的には売上を上げるだけです。
そして売上を上げる為には、見込み客の見極めが大切となります。
見込み客と冷やかし客の区別ができなければ、①や②のタクシーの運転手と同じような手段をとってしまったり、芳しくない結果となってしまったりする可能性が高まります。
客数全体ではなく、見込み客数の見極めを行うことが、売上の上昇という目的を達成する鍵となるのかもしれません。
常に、何が重要なのか、なぜ?なぜ?なぜ?を繰り返していくことで、少しずつ理解できるようにしていきたいですね。
参考著書:稼ぎたければ、捨てなさい
著者 船ケ山 哲さん