ひとに何かをしてほしいときや、説得したい時には、話題や場面、そして相手や自分など、様々な要素に応じて訴える矛先を変えることが必要とされます。
本記事では、説得における大切な三つの技術を解説していきます。
目次
説得に必要な三つの技術「エトス・ロゴス・パトス」
「エトス・ロゴス・パトス」とは、古代ギリシャ時代の発明で、
それぞれ日本語に訳すと下記意味を指す言葉となります。
エトス=信頼性
ロゴス=倫理
パトス=感情
この三つの技術的構成要素は、説得において、それぞれどのような特徴があるのか、順番に解説していきます。
エトスとは
アリストテレスらによると、エトス・信頼性とは「肩書や仕事ではなく、その人物からにじみでてくるもの」だと説明されています。
テレビのニュースで、コメンテーターとしてどこかの大学教授が出てきたり、評論家が話していたりするのは、そのひとたちに話をさせることによって説明の信頼性を上げようとする手法で、「信頼性」を使用したよく見る技術といえます。
しかし、もしそのひとたちの話がまとまりのない話だったり、わかりにくかった場合、情報の信頼性も一気に急降下するので、「エトス」の力は話し手の説得力によって変化します。
ロゴスとは
倫理がめちゃくちゃな話よりも、整理された話の方が説得しやすいので、原因と結果、また話題の関連性などを一貫させ、客観的データを用いるのが、ロゴスの技術です。
ちなみに、倫理の定義は「思考の形式、法則。または思考の法則的なつながり」のことなので、
話における倫理とは、「物事の展開や順序」のことであり、説得力のある話の展開には「ロゴスの技術」は不可欠な要素といえます。
つまり、「ロゴス」とは、話の土台や骨組みのことを指していて、
ビジネスシーンでよく使われる「定量的」という言葉は、この「ロゴス」と同じ意味合いを持ちます。
パトスとは
パトスは、人間的な心に訴えかける技術で、「相手の感情に刺激を与える」という考え方です。
ビジネスシーンで使われる「定性的」という言葉は、この「パトス」と同じ意味合いを持ちます。
「エトス」と「ロゴス」と「パトス」を上手に使うには
例えば朝の海岸を歩いている時に、心ない海水浴客によって汚されている浜辺を見て、利用者にごみを持ち帰るよう、「エトス」と「ロゴス」と「パトス」を使用して説得を試みると仮定します。
相手に対して、例えば自分がこれまで行ってきたボランティア活動などで得た知識や経験を伝え、十分に清掃活動を語る資格があるように感じられるよう説得を展開するのが「エトス」。
海岸が汚れると生態系にどのような影響があるかを科学的に実証し、因果関係などを訴えるのが「ロゴス」。
そして、ビニール袋をクラゲと間違えて飲み込んだウミガメが苦しむ姿を見せることで、「かわいそう」と心に訴えかける説得手法が「パトス」
ということになります。
要するに、何に訴えかけるかによって、説得の展開と方針は変わってくるという事です。
同じ食材でも、相手が望む食べかたは異なる
例えば同じ食材を扱う調理でも、「煮るのか・焼くのか・蒸すのか・揚げるのか」によって全く異なる食感を生みます。また調理法によって、使用する鍋や調味料も変わります。
食事と同様に、ビジネスでも説得でも、相手が何を求めているのかを考慮し、話の展開や方針に合わせ、語彙や写真なども使い分けることが必要です。
昔上司が、「定量的なモノを、定性的に話すのがプレゼンのコツ」と教えてくださいました。
これも、基本的には「エトス」と「ロゴス」と「パトス」の応用だと思います。
例えば「ロゴス」に特化した説得(プレゼン)だと、
「言っていることは正しいけどおもしろくない」という評価だったり、「パトス」に特化した説得だと、「気持ちはわかるけど根拠が薄い」という評価になってしまうかもしれません。
しかし、それぞれを取り入れると、
数字やデータをベースにした「ロゴス」でプレゼンの客観的精度を上げ、情熱的な伝え方「パトス」の要素も取り入れた「合理と情理の複合技」で、話を展開していくことができるため、
「しっかり調査し、ここまで言うんだったら、我々もきちんとやらなければ」という結果を生みやすくなるといえます。
上司から教えて頂いたこの言葉は、今でも印象的で、大切にしている言葉です。
みなさんも、物事の優位性を高める説得の技術、話の調理法となる「エトス」と「ロゴス」と「パトス」、良かったら意識して活かしてみてください(*^^*)