人気の法則

「人気」の本質、それは自分に対する周囲の概念が形となったものである。

違う見方をすれば、周囲に対する自分の接し方が集約されたものでもある。

「人気」という概念は、実はとても奥深い。

本記事は人気を形成するふたつの種類と、その性質を詳しく解説していこう。

人気には、二種類のタイプが存在する

現在、社会科学で研究されている「人気」には、少なくとも二種類のタイプがあると考えられている。

その二種類とは、「ステータス」「好感」である。

ステータスとは、思春期前はほとんど意識しないものであるが、思春期に入った途端、ありありと感じ取るようになる。

したがって、高校生の頃などに存在した「人気者」は、後述する「好感」の高いひとではなく、「ステータス」の高い人物が多い。

ステータスは好感度で測るものではなく、「支配力」や「目立つこと」、「才能」そして「影響力」などがある。

人気のもうひとつ「好感」は、小さな子供でも認識できる感情である。研究によると、四歳くらいから「誰が人気者か」「信頼できるのは誰か」答えられるという。

ただ、彼らにとっての人気者とは、才能や支配力があるわけでもないし、目立つ存在でもない。子供にとっての人気者は、

「皆に好かれている」

ただ、それだけである。

「好かれる・嫌われる」の仕組み

1982年、デューク大学の心理学者ジョン・クイーン教授が画期的な研究を行った。

この実験は子供たち同級生全員の名前を書いたリストを見せ、ふたつの簡単な質問をすることから始まる。

「一番好きな子は誰?」と「一番嫌いな子は誰?」

この実験では、どちらの質問にも好きなだけ名前を挙げていいことになっている。

クーイ教授の研究グループは、500人を超える子供たちにこのふたつの質問を行ったが、その結果は非常に興味深いものであった。

まず驚いたのが、

「一番好き」に挙げられた子供の名前が、「一番嫌い」にも入っている場合があることである。

「好き」と「嫌い」は別の尺度であるが、両立することがあるということだ。

次に、よく名前が挙がる子と、名前が挙がらない子がいること

教室で目立っている子供は、どちらの質問でも名前が挙がることが多いが、まったく逆の子供たちもいる。まるで教室に存在していないかのように、どちらの質問にも全く名前が挙がらないのだ。

クーイ教授は、この回答結果を五つのカテゴリーに分類し、グループ構築を行い、縦横のマトリクス図で表現している。

この図は、「人気」がもつ、様々な側面を理解する基盤となった。

好きは縦軸、嫌いは横軸で表しているこの図は、「一番好き」に名前が挙がれば挙がるほど名前は上に、「一番嫌い」に名前が挙がれば挙がるほど名前は下にくるというものだ。

「人気」にまつわる五つの特徴

まず左上にくるのは、周囲から非常に好かれ、ほとんど嫌われていない子供たちがくる。(図上ではそれを「受容される子」と呼ぶ)

これと正反対に右下は、「一番好き」には名前が挙がらないが、「一番嫌い」に名前が挙がってしまう子供たちを加え、

「一番好き」にも「一番嫌い」にも名前が挙がらない、つまり注目されていない子供たちは、左下の「無視される子」に加えた。

そして右上の枠に入るのは、非常に好かれていながら、同じくらい嫌われている子供たちが加えられ、この図上では「敵味方の多い子」という枠に入る。

この「敵味方の多い子」の枠に入る子供たちはごくわずかで、五つのグループの中でも最も少ない割合である。

以上四つのグループに入る子供たちは、全体の60%程であり、残りの子供たちは、「平均的な子」という五つ目の枠に集められた。

全グループの中で最も多い「平均的な子」は、好き・嫌いの質問に極端に名前が挙がることはないが、大抵はどれか一つのカテゴリーに近い特徴がみられる子どもたちである。

「人気の要素」は一生持続する

自分の存在をカテゴライズされるのはいい気分ではない。ましてや、「無視」や「拒否」なんてレッテルを張られたらたまったものではないだろう。

そしてこれらの特性は、個人とグループとのミスマッチは反映されていないと考えられる。

例えば、そのコミュニティを変えてしまうことで、特性も変わることも考えられるのだ。

「無視」の子供たちは、転校すれば好かれるのか。「拒否」の子供たちは、新たなチャンスを与えられれば人気者になれるのか。

これらに疑問を感じたクーイ教授は、

環境が変わっても同じカテゴリーに所属するのか、追跡調査を行った。

彼は10歳の子供たちを研究室に招き、一緒に遊ばせた。子供は無作為ではなく、四校から四人ずつ招いた。互いに面識もない。四人の構成は、「受容」「拒否」「無視」「平均」だった子供たちである。

※「敵味方」はごく少数の為、調査には加えていない

被験者となった子供たちは週に一時間、研究室で遊んでもらう。研究部屋には、子供が好むたくさんのおもちゃを用意している。まずは大人の監視下で一緒に遊ばせ、その後は自由気ままに過ごさせた。

一時間が経過したところで、調査員が子供たちの人気度を測る。

意図を悟られないように調査員が車で子供の自宅に送り届ける過程で、最近の出来事やおもしろかったことなど、自然な会話から始めていく。そして自宅に到着しそうになるタイミングで、「今日の遊び時間で一番好きだと感じた子は誰?」と尋ね、そこから二番目、三番目、四番目と聞いていく。

この実験では、第一週目の結果では、前回のカテゴライズとの一致は見られなかった。メンバーを変えたことで、まったく新しいスタートを切ったといえるだろう。第二週目も同様に行ったが、関連性はうかがえなかった。

しかし第三週目、遊び場と学校での人気度に類似点が目立ち始めた。つまり、たった三時間遊んだだけで、「受容」の子は再び「受容」のグループに、「拒否」だった子は環境が変わっても、最も嫌いな子として「拒否」のグループへ。「無視」だった子は、研究室でも「一番好き」にも「一番嫌い」にも属さなかった。

調査はさらに三週間続いたが、この傾向は顕著になるばかりであった。

この研究の結果、

「仲間に受け入れられる要素は普遍的に持続する」という事が証明されたのである。

人間を突き動かす欲望

ローマ中心部にあるトレヴィの泉は、代表的な観光スポットであり、毎日多くの観光客が訪れる。

噴水からは膨大な量の水が流れ落ち、観光客はその美しいたたずまいと迫力ある水音に歓声を上げる。

しかし、彼ら観光客の一番の目的はコインを投げることだ。

ここでは、願いを叶えようと、一日3000ユーロ(約40万円)分のコインが泉に投げ込まれている。世界中の願いがコインとなって、この泉に集まっているのだ。

観光客は、何を願うのか?

一生を通じて抱き続ける願望を検証する為、数多の研究がなされ明らかとなっていったのは、

ひとの願いは基本的に同じという事である。

ひとが欲しがる「権力」と「美」と「注目」

心理学者はひとの欲求を二種類に分類した。

一つ目が「内発的な欲求」である。

単に自分が心地よくありたいと思う欲求で、周囲の反応やフィードバックを必要としないことが特徴である。

内発的目標は精神的な成長や自己実現を促し、なるべく向上したい、より良い人間になりたいと思わせてくれる。

他人と分かり合いたい

誰かを愛したい

健康で幸せになりたい

これらの欲求も、内発的欲求に分類される。

これらが内発的欲求に含まれるのは、他人の幸福を願うことが、例え他人に自分の善意を気付いてもらえなくても、その気持ちだけで自分の気分が良くなるからである。

そして二つ目の欲求が「外発的欲求」である。

これは簡単にいえば、「好感」ではなく「ステータス」に根差した人気で、欲求を満たすには、他人の肯定的なフィードバックが必要であり、自分一人では満たされないことが特徴である。

外発的欲求に共通するのは、「名声」「注目」で、

・有名になりたい

・称賛されたい

・きれいになりたい

・出世して偉くなりたい

これらは全てステータスに根差した外発的欲求である。

願いにおける多くの割合を占めるのがこの外発的欲求であり、

男性は「権力」を、女性は「美」を求める願いが最も多かった。

つまるところ、結局ぼくらは「凄い」と、「羨ましい」と、思われたいのである。

ステータスという幻想

心理学者のリチャード・ライアンとティム・カッサーは「外発的な目標」が生活満足度と幸福に興味深いつながりを持つことを明らかにした。

二人は大人を対象にした長期的な調査で世界各国の人々の願い事を尋ね、彼らの幸福度を調べた。

その結果、「内発的な目標」を求めるひとは幸福度が高く、バイタリティーがあり、自信に満ち溢れ、身体も健康であった。これに対して「外発的な目標」を求めた人々は、不満や心配事が多く、うつ傾向もあった。そしてこの傾向は、各国問わず同じであったのだ。

その後も各国の被験者を複数回にわたり追跡調査しているが、ステータスを求めていた被験者は、往々にしてその後の人生が困難になる傾向が強かったのである。

現代社会は、時間やお金、エネルギーさえあれば、誰でも高いステータスを得られるという幻想をつくりだしているが、

この事実から理解できることは、「ステータス」で手に入れた人気が、僕たちを幸せにしてくれることはないのである。

好感を持たれる6つのポイント

人気における二種類の違い、「好感」と「ステータス」に関して、ある程度理解して頂いたと思う。

そしてそれぞれの特徴を解説する中で、本当に大切なことは「好感」であることも理解頂いたはずだろう。

シンプルながら「人気」の神髄ともいえる、

「好感」のための6つのポイントをご紹介して、本記事のおわりとしよう。

心理学者は、「ひとに好かれる力」について、様々な研究を重ねてきた。

その中で、ある特定の性質が存在することが明らかとなった。

・環境に対応する適応力

・賢い(賢すぎない)

・気分が安定している

・最後まできちんと話をする

・相手にも話す機会を与える

・創造的(問題解決策をひねりだす)

これらは大人も子供も共通である。付随するなら、「和を乱さないこと」も、最も大切な要素のひとつといえるだろう。

要は、協調性が高く、ひとを助け、経験を共有し、ルールを守るひとが好かれるのである。

これらを周囲から認められ、「好感」を抱かれ、「受容」されると、人生の長期間にわたり、様々な利益を享受する。

そして、心理学者は、今からでもひとは変われると説いている。

変われない理由の多くは、「過去にとらわれていること」と、「自分は変われないと思い込んでいること」が原因であると明かされている。

ひとは、今この瞬間が、一番若い。

これから人気者になれるかどうかはわからないが、

今までより少しだけ、周囲のひとを大切にすることは、誰だってできるはずだ。

その延長線上に、「人気」という概念があるだけである。

参考著書:人気の法則

著者:ミッチ・プリンスタイン

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