”働かないアリ”に意義はあるのか【”働きアリ”と”働かないアリ”を隔てる反応閾値とは】

集団でコロニーを作り、小さいからだでせっせと働くアリさんたち。

小さいながらに走り回り、体格が一回りも二回りも大きな餌を、一生懸命コロニーに運ぶ。

そんな姿から、アリは働き者といった認識が広く浸透しており、「働きアリ」という俗称もついている。

しかし、そんな働きアリの中にも、一定数の「働かないアリ」が存在する。

今回は、長谷川英祐氏著書「働かないアリに意義がある」から

働かないアリの存在意義や役割について解説していこう。

働かないアリの存在

「働かないアリ」の存在はご存知だろうか?

「働かないアリ」とは、働きアリの中にも、ある一定数働かないことが確認されているアリのことである。

この「働かないアリ」の研究を進めていくうちに、おもしろい現象が明らかとなっている。

それは、働きアリの中に存在している、「働かないアリ」を取り除いたとしても、「働きアリだけの健全なグループにはならない」といった現象である。

どうゆうことかというと、働かないアリがいなくなれば、今度は今まで働いていた、「働きアリ」の中から、また一定数「働かないアリ」になってしまうということである。

さらにその「働かないアリ」を取り除いてみると、また新たに働きアリから働かないアリが出現してしまう。

実験では、これが何度も続いていくという。

みんな、本当は、働きたくなかったのか?

それとも、働かないことに意味はあるのか?

それには、次のような理由が隠されているという。

働かないアリの出現には、反応閾値が関係している

研究チームが調査を続けるうちに、「働かないアリ」は、ある影響の作用だということを結論付けた。

それこそが、「反応閾値(はんのういきち)」である。

◇反応閾値

反応閾値とは、ある刺激に対して行動を起こすのに必要な刺激量の限界値のことで、フットワークの軽さとも言えます。 例えば、ほんの少しでもほこりがあると気になってすぐに掃除する人は反応閾値が低く、かなり汚くなるまで掃除しない人は反応閾値が高いといえます。

この意味から察する通り、反応閾値とは、いわば「腰の重さ」のようなものである。

腰の重さはアリにも個体差があるということが明らかとなっているという訳ですね。

しかし、なぜ働いていたアリも、働かないアリがいなくなると、働かなくなってしまうのか。

それは、働かないアリがいなくなったことで、母数が減少し、コロニー維持が楽になることから生じる現象だと考えられています。

働かないアリが存在する意外な理由

反応閾値の影響で「働かないアリ」が発生してしまうということは、働かないアリも、「決してずっと働かない訳ではない」ともいえます。

ここに、働かないアリの意義がありそうです。

しかし、働かないければいけない時は、いつやってくるのか?

そして、そもそもなぜこのような「非効率」とも思える方法を採用しているのか?

それには、次に説明する「意外な理由」が隠されているらしい。

働かないアリの意義

例えばアリの「反応閾値」がみんな一律である場合、

一定時間に対する「作業量」自体は多くなるが、疲労の限界を迎えるタイミングも重なってしまうだろう。どれだけタフなアリといえど、働き続ければ疲労の限界が訪れます。

その限界が訪れた時、働きアリは疲労困憊で働けなくなり、一時的に動けないような状態になるといいます。

そうなると、コロニー全体が、一時的な機能不全に陥る可能性がある。

これを防ぐために、「反応閾値」に個体差を作り、腰の軽い「先鋒のアリさんたち」が動けなくなってしまった時、「腰の重いアリさんたち」が活動し始めるという仕組みを取っている。

止まってはいけない活動とは

実際、アリの活動には「一時的にでも止まってはいけない作業」もあるという。

例えばシロアリの大切な仕事のひとつである、卵をなめ続けるといった作業。

シロアリは卵を守るため、抗生物質を含んだ唾液で、絶えずなめ続けるという作業があるが、これが一時的に活動停止してしまった場合、30分も放置されれば、卵はたちまち乾燥し、カビが生え死んでしまうといわれている。

つまり、働かないアリは、見方を変えれば「後方予備軍」であり、先鋒のアリさんが働いている時は、働かないように見えているだけで、決してサボっている訳ではないといった見方もできるのである。

まとめ

僕たちの実社会でも、「働かないアリ」的なひとが、周囲に存在していることも多いと思いますが、

見方を変えると、どこかになにか意義があるのかもしれませんね。

僕がこの本に出合ったのは10年くらい前ですが、いまだに記憶に強く残っている、おもしろい本でした。

人間と共通する部分が多いアリの研究は、とても興味深く、また考えさせられる部分も多くあると思います。

余談ですが、このアリの研究、血の滲むような過酷な日々だったみたいです。

研究の為、ゴマ粒くらいの小さなアリを、一匹一匹念入りに観察し続け、逐一行動をチェックする日々は、目から涙ではなく、血が流れでてしまうほど、とんでもなくストレスのかかる辛い日々であったと著者は語られています(笑)

個人的にとてもおもしろい本でしたので、もしよかったら見てみてください(*^^*)おしまい

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA