保証人と連帯保証人、
同じように捉えている方も多いこのふたつですが、
実はこれらふたつには、とても大きな違いが存在します。
今回は、これらふたつの違いと、民法改正による「連帯保証人」の変更点をご紹介していきます。
目次
保証人と連帯保証人
◇保証人
「主たる債務者が、
その債務を履行しないときに、
その履行をする責任を負う者」
民法ではこのように記されています。
ざっくり訳してしまうと、
お金を借りたひとが返済できない場合、借りたひとの変わりにあなたが返済してくださいね。
というものです。
しかし、実際に保証人を立てるケースでは、こちらの保証人ではなく、
連帯保証人を指定してくる場合がほとんどです。
連帯保証人は、保証人の上級版
連帯保証人には、保証人に認められている「3つの権利」が放棄させられている。
これが、連帯保証人が、最も悪名高いといわれる所以だろう。
連帯保証人になると、放棄させられる3つの権利は次の通り。
①催告の抗弁権
②検索の抗弁権
③分別の利益
ひとつずつ解説していきます。
①催告の抗弁権
◇催告
相手方に対して一定の行為を請求すること。
催告の基本的な意味合いは催促と同じです。
つまり、「催告の抗弁権」とは、保証人が債権者(金融機関)から「代わりにお金を払ってください」と言われたとき、「まずは債務者(借りた張本人)に催促してください」と伝える権利のことです。
連帯保証人になると、この催告の抗弁権が失われるため、もし仮に、債務者(お金を借りた張本人)よりも先に連帯保証人に「払ってください」と伝えられた場合、断らずに応じなければいけません。
よほどのことがない限り、債務者を差し置いて、連帯保証人に取り立てにくることはないでしょうが、理論上は可能ということになります。
また、債務者が姿を消してしまえば、債権者はすぐに連帯保証人へ取り立ての変更ができるので、わざわざ債務者を、必死に探さなくてもいいといった側面もあります。
②検索の抗弁権
ふたつめが検索の抗弁権。
ここでいう検索とは、「ガサ入れ」のイメージみたいなものです。
連帯保証人が債権者から請求を受けた時、「債務者(借りた張本人)」はお金を持っているから、財産を調査してください」というようなもの。
例えそれが事実で、仮に証拠があったとしても、債権者は聞く必要はありません。
連帯保証人が、債務者は財産を隠し持っていることを知っていたとしても、債権者から請求を受けてしまえば、応じる他なく、逆にお金を借りた張本人は、隠れてゆうゆうと生活している。といったケースも発生する可能性もあるといえるでしょう。
③分別の利益
分別の利益とは、対象の債務に対して、保証人が複数存在して居る場合、対象の債務を「頭割りした金額」しか責任を負わなくてもいいというもの。
例えば100万円の債務に対して、4人の保証人が存在する場合、1人当たりの債務金額は25万円となります。
連帯保証人には、これらの利益も発生しないため、仮に連帯保証人が複数存在する場合であっても、債権者が自分一人に全額返済の請求を要求した場合、従わなければなりません。
債権者が「連帯保証人」を指定する理由
ここまで確認してみると、連帯保証人が、どれだけ弱い立場にあるのか、よく理解できると思います。
そして、金融機関などの債権者は、基本的に「連帯保証人」を指定してきます。
なぜなら、これら3つの権利を行使されると、面倒くさいから。
そして何よりの理由は、
多くのひとが、保証人と連帯保証人の違いを正確に把握していないからだといえます。
よくわかっていない方々を相手にするとき、わざわざ取り立ての対象になりえる相手の、優位性を高める「保証人」になってもらうほど、お人好しな金融機関は、基本的には存在しません。
2020年4月 民法改正
民法のうち債権関係の規定は、1896年に制定されて以降、約120年にもわたって、実質的な改正が行われていませんでした。
しかし、2020年4月に大幅な民法の改正が実施され、
連帯保証契約においても、いくつか見直しがなされました。
大きく変更される点は次の通り。
①極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効
②特別の事情による保証の終了
③保証人になることを主債務者が依頼する際の情報提供義務
順番に解説していきます。
①極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効
個人が保証人になる根保証契約については、
保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額(上限額)」を定めなければ、保証契約は無効となります。
また、極度額は書面等により、当事者間の合意で定める必要があり、「○○円」などと明瞭に定めなければなりません。
◇「根保証契約」
根保証契約とは,一定の範囲に属する不特定の債務について保証する契約
をいいます。
例えば,保証人となる時点では,現実にどれだけの債務が発生するのかがはっ
きりしないなど,どれだけの金額の債務を保証するのかが分からないケースを
いいます。
※法務省HPより引用
ざっくりと説明すると、今後は保証契約時において、
予め金額の保証する「上限」を定め、両者が合意したうえで成立する契約となります。
②特別の事情による保証の終了
個人が保証人になる根保証契約については,保証人が破産したときや,主債務者又は保証人
が亡くなったときなどは,その後に発生する主債務は保証の対象外となります。
※法務省HPより引用
①も②も、
あくまで個人での保障になるので、会社などの法人は含まれないことに注意しましょう。
③保証人になることを主債務者が依頼する際の情報提供義務
事業のために負担する債務について保証人になることを他人に依頼する場合には,主債務者
は,保証人になるかどうかの判断に資する情報として,①主債務者の財産や収支の状況
②主債務以外の債務の金額や履行状況等に関する情報を提供しなければなりません。このルールは,事業用融資に限らず,売買代金やテナント料な
ど融資以外の債務の保証をする場合にも適用されます。
※法務省HPより引用
債務者を保証する場合、保証できるような「情報」は必要です。
その情報を、債務者の「人間性」だけで判断しようとせずに、
「収支状況」や「返済能力」も、きちんと考慮する必要があるでしょう。
それを民法でも定めて、ルールにすることで、保証する側が債務者に伝えやすくもなると思うので
しっかりと利用し、保証する対象の情報を確認しましょう。
まとめ
今回も、前回に引き続き「サイフの穴をふさぐには」を参考にしています。
▽Amazon
今回は、連帯保証人の悪名高い側面にフォーカスしましたが、考え方はケースバイケースだと思います。
僕自身、保証人の依頼をしたこともありますし、
ある社員の独立の為、400万円を超える債務の連帯保証人になろうとしたこともあります。(最終的に話自体がなくなってしまい、結果的になりませんでしたが)
ただひとつ言えることは、自分が何をお願いしているのか。またはお願いされているのか。
その「契約内容」をきちんと頭に入れていなければ、後から気付いても変更は効きませんし、不安は水増しされることでしょう。
リスクは「悪」ではありません。しかし、それは「きちんと理解していればこそ」です。
知らないからコワイんです。だから、「知ること」に貪欲になりましょう。
その為にも、毎日ひとつでも「為になる情報」をばらまいていきますので
今後とも僕のブログのチェックの方も、よろしくお願いします(笑)おしまい。
▽楽天市場
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